機械設計の全貌を探る
これまでの連載では「機械設計の定義」「役割」「心得」をお話ししてきました。
今回は、具体的に「機械設計の業務範囲」について解説します。
「設計者の仕事って、机に座ってCADをカタカタやるだけじゃないの?」
——こんなふうに思っている方も多いのではないでしょうか。
実際には、設計者の仕事は図面作成にとどまらず、製品の企画段階から完成後の改良に至るまで、幅広い領域に関わります。
今回はその全体像を一緒に見ていきましょう。
機械設計の業務範囲を大きく分けると?
1. 構想設計(アイデアを形にする)
最初の段階は「構想設計」です。
ここでは「こんな機械をつくりたい」という要求をもとに、どんな方式や仕組みが最適かを考えます。
たとえば自転車の例なら、「街乗り用に軽量化したいのか」「競技用に高速性能を重視するのか」で設計の方向性が変わります。
この段階はまさに“アイデアを現実に落とし込む”作業です。
2. 基本設計(製品の骨格を決める)
次に行うのが基本設計。
ここでは主要な部品や構造を決め、製品全体の「骨組み」を固めます。
圧力容器であれば、容器の厚さや安全弁の位置、材質の選定などを決める工程です。
安全やコストを大きく左右するため、設計者の経験と知識が問われる重要なフェーズです。
3. 詳細設計(図面に落とし込む)
基本設計で方向性が決まったら、CADを使って部品一つひとつの寸法や形状を描きます。
ねじのサイズ、溶接方法、加工精度など、細かい条件を詰める作業です。
「設計=図面作成」と思われがちな部分がここにあたりますが、実はこれは全体の一部でしかありません。
4. 評価・試験(机上の計算を現実で確認)
設計図が完成しても、机上の計算だけでは不十分です。
試作機をつくり、実際にテストを行って性能や安全性を確認します。
例えば、自動車のブレーキなら「急ブレーキを何千回繰り返しても壊れないか」を検証する。
圧力鍋なら「蒸気が一定の圧力で必ず逃げるか」を確認する。
こうした評価を経て初めて「量産に移せる」と判断されます。
5. 量産・改良(世に出した後も続く設計者の仕事)
製品が市場に出たら終わり……ではありません。
むしろそこからが本番です。
ユーザーの声を聞き、不具合があれば改善策を考える。
コスト削減や性能向上の改良設計も大切な業務です。
つまり設計者は、「製品の一生に寄り添う存在」でもあるのです。
設計者に求められる幅広いスキル
こうしてみると、機械設計の業務範囲は「アイデア発想」から「現場検証」「アフター対応」まで本当に多岐にわたります。
だからこそ設計者には、以下のような力が求められます。
技術的知識(材料力学、流体力学、制御工学など)
道具の使いこなし(CAD、解析ソフト、計測機器)
コミュニケーション力(製造現場や顧客との調整)
問題解決力(不具合が出たときの原因追及と改善策の提案)
設計者は、まさに「総合力」で勝負する職業です。
まとめ:機械設計の業務範囲を再確認しよう
機械設計の業務範囲は以下の流れで進みます。
1. 構想設計
2. 基本設計
3. 詳細設計
4. 評価・試験
5. 量産・改良
一見すると「図面作成」が中心に思えますが、実際には「製品の一生に関わる仕事」だということを理解してほしいと思います。
若手への一言メッセージ:視野を広げて仕事を楽しもう
若手のうちは「自分は図面しか描いていない」と感じるかもしれません。
でもその図面は、構想設計や基本設計、そして現場の声を受けて成り立っている大切な一部です。
視野を広げて「自分の図面がどこで活かされ、誰の役に立つのか」を意識すると、仕事の面白さが一気に増していきます。
次回は「機械設計の手順」についてお話しします。ぜひお楽しみに!
さむらいすけ


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