設計者としての心構えを深めよう
第1回では「機械設計の定義」、第2回では「機械設計の役割」についてお話ししました。
今回はもう一歩踏み込んで、「機械設計の心得」、つまり設計者が日々の仕事でどんな心構えを持つべきかを考えてみましょう。
設計は知識やスキルも大事ですが、最終的には「どんな姿勢で取り組むか」が製品の質を左右します。
私自身、失敗や成功を重ねる中で学んできたポイントを、若手向けにわかりやすくまとめました。
機械設計の心得:3つの柱
1. ユーザーの喜ぶ顔を思い描く:設計の原点
設計者の仕事は、単に図面を描くだけではありません。
「この製品を使う人が、どんな場面で、どんな笑顔を見せてくれるか」を想像することが大切です。
例えば、自転車を設計するなら「通学で毎日使う高校生が、雨の日でも安心してブレーキをかけられるか」を思い浮かべる。
圧力鍋なら「料理が得意でない人でも、安全においしい料理を短時間で作れるか」を考える。
ユーザーの立場に立つことが、信頼される設計への第一歩です。
2. 法律・安全・環境を守る倫理観を持つ:責任感を忘れずに
設計者の一筆一筆は、人命や環境に直結します。
だからこそ、「法令を守る」「安全を守る」「環境を守る」という基本姿勢を決して忘れてはいけません。
例えば、あるボルトの強度計算を少し甘く見積もっただけで、最悪の場合は大事故につながります。
工場やプラント設備では、ちょっとした油断が環境汚染や火災を引き起こす可能性もあります。
設計者は「見えない責任」を常に背負っています。
これはプレッシャーでもありますが、その分やりがいも大きいのです。
3. 失敗を恐れず、学びに変える:成長のチャンスを掴む
私が若手時代に痛感したのは、「設計者は失敗からしか成長できない」ということです。
あるとき、液体窒素の配管設計で圧力損失の計算を見落とし、試運転で液体がまったく流れなかったことがありました。
現場は大騒ぎ、先輩からも厳しく叱られましたが、この経験が「現場を意識する大切さ」を骨身に染みて教えてくれました。
失敗は恥ではありません。
むしろ、次に同じミスをしないための財産です。
大切なのは、失敗を正直に振り返り、次に活かす姿勢です。
まとめ:機械設計の心得を再確認しよう
機械設計の心得をまとめると、次の3つに尽きます。
1. ユーザーの喜ぶ顔を思い描く
2. 法律・安全・環境を守る倫理観を持つ
3. 失敗を恐れず、学びに変える
知識やスキルは勉強すれば身につきますが、この3つの心構えは日々の意識の積み重ねがなければ育ちません。
若手への一言メッセージ:設計の未来を共に築こう
設計の世界は奥が深く、正解が一つに決まることはめったにありません。
だからこそ「自分の設計で誰かが喜んでくれる」というイメージを持ち続けてください。
もし壁にぶつかっても大丈夫。
失敗も含めて、すべてが次の設計につながる糧になります。
あなたの描いた一枚の図面が、未来の社会を支える一歩になる。
そのことを誇りに思って、一緒に学び続けていきましょう。
次回は「機械設計の業務範囲」についてお話しします。
お楽しみに!
さむらいすけ


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